学長あいさつ
教師の素晴らしさは,成長著しい子どもたちと直接関わって,教え,導くとともに,教師自身もまた児童・生徒の問いかけによって深化するという,その行き来にあります。そこには,教科の専門性はもちろん,多様さを認める姿勢,いじめを生まない人間関係づくりなど,全人格的な資質が求められています。
2020年度から小学校において全面実施される新学習指導要領では,これまで改訂の中心であった「何を学ぶか」という指導内容の見直しに止まらず,「どのように学ぶか」「何ができるようになるか」までを見据えて改善が求められました。学びの本質として重要になるのは,「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指した「アクティブ・ラーニング」の視点から,全ての授業改善に取り組んでいくことです。
こうした中,宮城におきまして,探究の対話(p4c)と呼ばれるこれまでにない新しい取組が生まれております。これは,子どもたちが円座になり,自分たちが立てた問いを,対話を通して考えを深めるものであります。基盤となるのは,「何を話しても否定されない,みんながちゃんと聞いてくれる」という安心感(セーフティ)であり,いじめに対する根本的なアプローチとしても,東日本大震災から8年目を迎えた,宮城の被災地の子どもたちの心のケアとしても,有効ではないかと言われております。
目指していることは,新学習指導要領の基本的な考え方の1つに示された「主体的・対話的な深い学び」であり,これから間違いなく注目される取組であると考えております。
本学が平成25年度から研究実践を重ねてきた取組を通して,これまで明らかになった成果として,「子どもの問いを大切にし,対話による探究する」という学び方を経験することにより,課題の発見・解決に向けて主体的・対話的に学ぶ,いわゆるアクティブ・ラーニングの授業モデルの1つになりうるということです。2つ目として,話し合いの大前提となるセーフティの確保により,心地よい居場所づくり・より良い柔らかな人間関係の構築ができ,いじめ・不登校など生徒指導上の課題解決につながることが報告されております。
また,中学校において今年4月から全面実施となった道徳教育(小学校は2018年度から全面実施)においても,「考え,議論する道徳科」の有効な教育的アプローチとして注目されております。
宮城教育大学では,上廣倫理教育アカデミーを設置し,「探究の対話(p4c)」の実践・研究を通して,教育現場に新たな風を吹き込むとともに,これからの教育を担う高い資質を有する教員の養成に力を尽くして参ります。
国立大学法人 宮城教育大学長 村松 隆