宮城教育大学 上廣倫理教育アカデミー

    上廣倫理教育アカデミー

p4cみやぎ「p4cだより」no.48

令和5年11月27日

p4cみやぎ10月研修会報告

第2回p4cみやぎ定例研修会(オンライン)

第3回p4cみやぎ定例研修会が、10月25日(水)にオンラインで実施されました。

研修Ⅰでは,宮城教育大学教授 川﨑惣一先生から、「何のためのp4c??」というテーマで話題提供をいただきました。研修Ⅱでは,川﨑先生の講話を受けて3つの分科会で協議と情報交換を行いました。6名の新しい参加者をお迎えして,和やかな雰囲気の中で研修会が進みました。


【研修Ⅰ】 

話題提供:「何のためのp4c??」

講師:宮城教育大学教授 川﨑惣一 先生

p4cが仙台/宮城でスタートして今年で10年になりますが、ここであらためて、私たちがp4cを実践する目的についてみなさんといっしょに考えてみたいと思います。

・p4cとは何か?

P4Cはアメリカの哲学者・教育学者であるマシュー・リップマン(Matthew Lipman,1923-2010)が1970年代に開発した教育手法です。その後、リップマンP4Cを学んだトマス・ジャクソンが独自の「p4cハワイ」を開発して、1984年よりハワイ大学マノア校を中心に活動を始めました。宮城県内では、震災後にハワイの先生方が来日して実践してくださったのをきっかけに、p4cハワイのスタイルを取り入れる仕方で、「探究の対話(p4c)」の活動が始まりました。

・P4Cの目的(by リップマン)

リップマンはP4Cを「思考のスキルを育むような信頼性のあるプロフラム」として構想し、子どもたちに反省的思考を促すことを目指しました。

・探究(inquiry)の重要性と「反省的思考」

P4C/p4cにおいて重要なのは探究です。教師が一方的に教えるのではなく、教師と生徒で問いを共有して、一緒に探究することを目指します。参加者の思考がより良いものになるように思考の質を高めるという問題意識も強く持っており、これはジョン・デューイの反省的思考に影響を受けています。

・「会話」と「対話」の違い(by リップマン)

「対話」は「会話」のような単なるおしゃべりではなく、ある方向に向かいます。リップマンは「対話」について「共同で行う探索であり、吟味であり、探求である」と書いていますが、「対話」ではどこに向かうかは決まってはいないけれど、みんなで問いを共有して一つの方向に向かい前進していることを実感することができます。

・「知的安全性(Intellectual Safety)」について

 p4cハワイでは探究よりもコミュニティが重視されます。現場の先生方を信頼しつつ、子どもたちの「wonder」を伸ばすことが目指されています。「知的安全性」のある空間では、何を話しても受け止めてもらえるという雰囲気のなかで、参加者は自分のアイディアを発表できるようになります。
 ただし、「知的安全性」のあるコミュニティでは、意見の多様性を礼儀正しく受け取ることが重視されます。また自分の意見とともに、その根拠を示すことも大切にしています。

○出席者全体での対話「何のためのp4c??」

森先生:問いを立てることが大事と考えています。

佐藤所長:幼児期就学以前の子どもは問いを立てることが難しい実態があります。冨塚先生が以前に実践された金融教育でのp4cで問いが沢山出てきました。何か工夫点があれば教えてください。

冨塚先生:ローソンがつぶれた時に「何でつぶれたのか?」で問いを立てることができました。「何でだろう?」と考えるために「wonder」という掲示物を教室に掲示して問いを集めています。

川﨑先生:道徳では読み物資料を活用して問いを作るのは難しく、最近は問いを設定してp4cを進めることが多いです。

森:成長すると知識が増え、問いが少なくなると思います。p4cではこんなことも考えていいと思える良さがあり続けています。

宇山先生:私は、コミュニケーションの根幹の「安心感」を作ることを大切にしたくてp4cを始めました。何でも言っていいという信頼感を作ることを大切にしています。

このような対話が行われました。


【研修Ⅱ】 

演習:「研修Ⅰを受けての協議&情報交換」

〔各グループから〕

〈Aグループ〉

〇「何のためのp4c??」ということだが、最近行った高校での経験からやることに価値があるということを実感しています。不登校気味な生徒たちとの少人数でのp4cでは、場の雰囲気がとても良く、生徒たちが安心して対話しています。

〇p4cはCBを持った人が話すという「話す」行為に注目されがちだが、実は聞くことの意味の方が大きいと思います。周りが聞き続けることで、例えば不登校気味の子どもたちにとっても居場所を作ることができると感じています。

〇大学からp4cを体験したが、コロナ禍で人との交流がない時を過ごし、いざ対面となった時、どちらかというと自己肯定感が低かった自分が、p4cの活動(対話)を通して成長できていることに気付きました。

〈Bグループ〉

〇p4c効果として、「相手を思いやる温かい気持ちになる」「自分の居場所ができる」気持ちを素直に表現できる」「皆さんと話すだけで落ち着く」などの感想をきくことができました。また、p4cを始めたきっかけは震災からの立ち直りであり、混乱の中でも子供たちを励ますことができる機会となりました。

○問い立てをするのが難しいと感じる児童生徒もいますが、子どもの持つ素朴な問いを大切にしセーフティーの中で話す安心感を十分に味わわせることで、活動意欲につなげたいと考えます。

○「p4cみやぎ」の実践は様々な視点から取り組まれ大きな成果を上げているので、共通理解を図りたいと考えます。

〈Cグループ〉

〇ある学校で「道徳の授業は、決まり決まった考えに向かって考えを確認するものなので面白くない」と児童から意見があったので、p4cを取り入れた授業を展開させました。そうすると、児童の自由な考え方を生み出したり、新しい形の道徳を進めていったりして学びを深めることができることが分かりました。

〇参加者の皆さんからは、p4cで聴く力、話す力、問いを立てる力が身に付くということを実践の学びを伝えていただきました。何より、皆さんから、p4cを通して、子供も大人も対話に楽しく取り組んでいるという話がたくさん出たことがよかったと思います。

HP    http://p4c-miyagi.com/

Mail    p4c@grp.miyakyo-u.ac.jp

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