宮城教育大学 上廣倫理教育アカデミー

    上廣倫理教育アカデミー

p4cみやぎ「p4cだより」no.56

令和7年2月12日

p4cみやぎ1月研修会報告

2024年度 第5回p4c みやぎ研修(オンライン)

 令和7 年が始まりました。皆様、どのような年を迎えられたでしょうか。今年一年皆様に幸多き事をお祈りいたします。さて、1月29日(水)に28名の参加者をお迎えして、第5回p4c みやぎ定例研修会(オンライン)を開催しました。今回は新しく1 名の方が参加してくださいました。
p4c に興味関心のある方々が集まって活動しております。


【研修Ⅰ】

講演:「臨床心理学の視点から見たp4c」
講師:宮城教育大学 教授(臨床心理学)
久保 順也 先生


◯p4c と心理療法の類似点
・p4c は心理療法、特にリフレクティング・プロセスに類似している。
・教育手段でありつつ、支援・成長促進に寄与している。

◯心理療法の考え方
・「語り」(ナラティブ)は他者との関係を築き、承認さ
れることで現実となる。時系列性、因果性がある。

◯社会構成主義social constructionism と心理療法
・「現実」は人との関係で構成される。
・リフレクティング・プロセスでは他者の意見を聞くのと同時に各自の内部で内的対話が起こる。自己の客観視と相互作用(自分の言葉が他者に響き帰ってくる)を促し、参加者全員が尊重される。

◯小グループp4c の特徴
・顔が見え、表情が分かり、声が聞こえる。少人数で安
全な環境を提供し、「問い」の活用や発言機会が増える。
時間に余裕がある中で、自己肯定感を向上させる。

◯World Congress of Philosophy 2024 Rome 発表報告

◯p4c と集団精神療法
・希望をもたらすこと・愛他主義・実存的因子、グループでの探究などの治療的要因が共通する。

◯発達の最近接領域
・子どもは援助を受けながら成長し、p4c もコミュニティの力を借りて子どもは育つ。心理療法との類似性。

◯ガーゲンの社会構成主義とp4c
・p4c は「自己の再構成」の場となり、他の場(カウンセリングの場や教室等)にも影響を与える。

◯まとめ
・p4c は参加者同士の再帰的対話を提供し、問題解決能力を育む安心・安全な場となる。
・p4c は知的セイフティや探究スキル、コミュニティ形成、自己内省へのレディネスを成長させる。
・生徒らは、相互に交流するだけでなく、同時に自己を再構成している。


【研修Ⅱ】 参加者による情報交換


〔各グループから〕

〈A グループ〉

〇p4c で不登校生徒が徐々に話すこと、表現することができるようになった。久保先生のお話のように誰かとのやり取りで自己の再構成をしていくということなのだと思いました。

〇子どもたちは絵本の読み聞かせなど、楽しさを取り入れることで「聞くこと」ができると感じました。

〇セーフティな環境の中で、なお且つ、話題が自分事として感じられると自己開示ができるのだと思います。

○探究の対話が進んでいくと自分の話を友達が聞いてくれました。それに対して「自分も聞く責任がある」というような気持ちになるのだと思います。

〇学校では態度から教えてしまいがちですが自分たちの話をよ~く聞いてくれる、きちんと話を受け止めてくれると感じることで子どもたちは変わるのだと思います。

〈B グループ〉

○人間関係は網の目に例えると、縦と横の接点が他人との対話のようなもので、網の目を強くすることはセーフティを強くすることに通じることなのかなと思いました。

〇自分の実践が臨床心理学的に整理された思いです。コミュニティの力を借りて子供は育つという点が実感を持って感じられました。

〇少ない人数のp4c ほど自分の問いで対話されるなど、自分の影響力が高まると感じています。

〇自由参加、少人数でp4c を行いましたが、授業でのp4cでは見えなかった難しさを改めて感じました。

〇大学では持ち寄ったテーマで発想を柔らかく考え、思いを広げていこうというスタンスでp4c を行っています。

〇客観的な事実は存在しないという話が印象的でした。人によって見方、考え方は違うというp4cに相通じるものがあると思いました。

〇改めてp4c を何のためにやっているのか自分を振り返る機会になりました。

〈C グループ〉
※コミュニティに合わせたファシリテーターとは?

〇ファシリテーターをする先生に、子供たちの様子を見て、何か良いことをしていたら褒めてあげるように伝えています。

〇別室登校の子どもたちには、まずp4c を行う日をきちんと知らせています。子どもたちがいかに自主的に参加できるかがポイントだと思います。無理強いはしません。

〇「友達」を題材に話したことを基にして対話を展開し、様々な意見が出ました。ある子が「一人にしてくれる友達」が良い友達と書いていました。他の子とは違う意見で、周りの子たちは「あるある」と言っていました。その子は、発言はしませんでしたが、認められたという感覚はあったと思います。

HP    http://p4c-miyagi.com/

Mail    p4c@grp.miyakyo-u.ac.jp